「名前……聞いてませんよね。私。
多分、いっつも聞かないから、聞いてないと思うんですけど」
「……はぁ。
あの……でも……」
「何か?」
「いえ。なんでもありません。
あー。えーと……」
このシーンが好きなの。
結婚したらという悪ふざけ妄想
「いってきまーす……」
「お弁当、忘れてませんか?」
「うん」
「今日、遅くなりそうですかね?」
「……さぁ」
「じゃぁ、夕飯作っておきます」
家事はまくまく担当。というよりも、えるえるがあまりにしないので、まくまくがやることに。まくまく、掃除洗濯料理は、地味ながらに手際がいい。彼は器用貧乏だから。ただ唯一、料理の味が、まずくないが、特別うまいということでもなく、得意料理と呼べるものが無い。ただ、レパートリーは豊富。
えるえるは、以前よりちょっとだけ仕事を増やすけども、やっぱり子供の養育費の積み立てには届かず、まくまく、子守しつつもバイトをする。ちなみに、ご近所との交流もそつなくこなしているようだ。
「(軽蔑の眼差しで)親父ってさぁ……。そんな人生でなんか楽しいことあるの?」
「……まぁ、それなりに」
息子が生まれたら、平凡な父親を間近に見ているので「こうはなりたくない」と思いつつ成長していく。逆に、自由人に近い母親える子の振る舞いに憧れるマザコンに成長。
そして、母に憧れ、魔法学に行くけども、そこは父親に似てしまって、素養があんまり無い。だから、余計にまくまくをうらむという父親嫌いの塊。
だけども父親譲りの分析力で、学術的なアプローチに長けている。
手先はえる子に似て不器用。大好物はまくまくが作るウサギのりんご。だけども彼はそれが「自分は不器用なんだから、与えられて当然の物」だと思っているアマちゃんなので、やっぱり父親は尊敬しない。むしろ、器用なのが「親父のくせに」と理不尽にムカつく。気づいてはいないが、彼は「大好物」が「嫌いな父親」の手をかけないと手に入れられないという自分への苛立ちが父親のムカつきに転化されている。
将来は、マザコンだから「仕事を持った女性」を望むのだけども、マザコンだから結婚したらしたで独占できなかった幼少時代を取り戻すかのように仕事をやめさせたがるに違いない。そして真面目で理想家だからその矛盾に大いに悩む。
マザコンだけど、える子はまともな子育てができないので、実質親父に育てられてる。
触れ合いが少ない分、美化をしている。
メガネは伊達眼鏡。
「だって、母さんも伊達眼鏡してるじゃん」的発想。
マザコン万歳。
娘は朝、お母さんの朝の支度の手伝い(というか世話)をする。時間になったら起こして、着替えを用意してあげて、ブラッシングとかしてあげる。
いつもは、眠くてぼーっとしてしゃべらないお母さんがブラッシングの時に突然
「……飴、いる?」
と話しかけられ、娘はパニックに陥る。
「え……あ……え?
えと……朝ごはんもうすぐだから……いい、です」
なぜかお母さんに対しては敬語な娘。尊敬の念とかではなく、単に対人関係の距離がそうさせる。
しばらくおろおろするけども母の反応がそれっきり無いので、再びブラッシングをする。頭の中では、「え? なんで朝から飴?」という疑問がぐるぐる回っている。
朝の食卓からは兄の
「たこさんウィンナーじゃないじゃん!」
という罵声が聞こえる。
兄は12歳だ。日本で言うならばもうじき中学生になるというのに、「たこさんウィンナー」が大好きだ。
「え? 細工はしてますけども……」
「赤いのじゃないと、たこさんじゃないだろ!」
ウィンナーはもちろん、パリッとしたジューシーなやつでなく、身体に悪そうなくらい着色料がふんだんに使われている赤いウィンナーを選ばなければならない。
それを聞いて「そこまで怒らなくていいと思うんだけど……。お父さんも、朝忙しいのにわざわざやってくれているんだし」と思いながら、うぅ、と気分が滅入ってしまう。
まくえる家は、「父の反面教師」で息子がわがままに育ち(しかも両親二人とも怒らないので、わがままっぷりに拍車がかかる)、「兄の反面教師」で娘が気を使うようになって成長している。
お母さんを見送ったあと、気ぃ使いな娘は、母の言葉をまだ考えている。ひょっとしたら母なりのコミュニケーションのとり方だったのだろうか。だとしたら、自分は母の不器用なコミュニケーションを無下に断ってしまって悪いことをしてしまったんじゃないだろうか。などと、考えてしまって胃が痛くなる。口の中が酸っぱくなる。
お皿を拭く手伝いをしながら、皿洗いをしている父親にそのことをぽつぽつと話してみる。
「いらなかったら、別に貰わなくてもいいと思いますけども」
という父の言葉で、ようやく安心するファザコン娘。
だけど、まくまくはいっつも貰っている。食事前にもらったとしても、「後にとっておきます」とか言いつつも貰う。処世術はまくまくが上。
まくまくの常識を持ちつつも、えるえるのストレス耐性の弱さを兼ね揃えてしまった不幸な女の子。
常識があるから、ストレスを回避しようと、気を使う。そしてそれがまたストレスが溜まってしまう原因になる。
兄(えるまくの息子)が反抗期いっぱいに父親にキツくあたるので、それをビクビクしながら見ているので、父親に同情的、あるいは同類的に思いながら育つ。
こちらはファザコン。
お母さんと触れ合いは少ないものの、お母さんの特異さは、女性同士なので、兄よりは現実を見て判断できている。
だから、物心つくころからお母さんの世話を父に代わってやっているものの、何考えてるんだかわかんない母親なので、ちょっと苦手。だけど何をしでかすかわからないので放っておけない貧乏くじ。
平穏無事な生活を送りたいといつも願っているので、きっと伴侶も父親に似た人を探すであろう。
実はかみさんの方がのっぽ